御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
彼女がなにを言っているのか、よく理解できなかった。一度挨拶を交わしただけなのに、抱くなどとんでもない。なにか誤解をしているようだ。

『確かにパーティーのあの日、私たちは顔を合わせましたが、抱くとはいったい……』

『私が酔いつぶれたとき、部屋に運んでくれたじゃありませんか。そのまま夜を明かして――』

『待って、待ってください、メアリー』

記憶が混同しているのか。俺はあの日の記憶を遡り、順序立てて辿った。

『確かにあなたは酷く酔っていて、私は肩を貸した。あなたを自室で休ませるために、大広間の階段をともに上った』

『そのまま私はあなたと部屋で一夜をともにしたはず――』

『いえ。私はあなたを部屋に送り届けたあと、使用人の女性にあとを任せました』

『え……』

俺の言葉が予想外だったのか、彼女は愕然としてその場に立ち尽くす。

『だ、だって! 起きたらバスローブを着ていたの! あなたが朝、部屋から出ていったところを見たって人が――』

『私は夜のうちに屋敷を出ました。それはあの日の出席者に聞けばはっきりするはずです。あなたを着替えさせたのは使用人でしょう』

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