御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
まだ放心状態の彼女の肩を抱き、秘書が運転する車の後部座席に運んだ。

秘書に久道グループの顔が利く最高級ホテルのスイートに宿泊させるよう指示する。

『明日、帰国できるように便を手配しておきます。それまでどうか体を休めて』

道に置き去りになっていたトランクとコートを車に運び終えると、後部座席を覗き込んだ。

『メアリー。どうかひとつ、教えてください。あなたに「朝まで私と一緒にいた」と吹き込んだのは誰です?』

『……ミスター・サンジョウが。私たちの関係は情熱的だと。すぐにでも結婚するべきだとアドバイスをくれました。お父様もとても喜ぶからと。……その言葉を、私は信じすぎていたのかもしれません』

やはり彼かと、落胆と怒りが入り混じる。

すると、メアリーはなにかを思い出したのか顔を上げて、もと来た道を見つめた。

『カエデは……』

『カエデ?』

彼女の口からその名が飛び出すとは思わず、まさかという思いに駆られる。

『ここまで案内してくれた、心優しい女性です。迷子だった私に声をかけてくれたの。もう行ってしまったのかしら。ああ、私ったら、まだお礼も伝えていなかったのに』

< 226 / 255 >

この作品をシェア

pagetop