御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
「……もうしません、そんなこと」

疑ってしまった自分を反省する。彼の気持ちを誤解して、勝手に距離を置いて――もう何度そんなやり取りを繰り返してきたことか。

「皇樹さんを信じる子どもたちを見て、勇気が湧いたんです。怯えて逃げるんじゃなくて、信じて待たなくちゃって」

廊下のうしろからバタバタという足音が響いてくる。

「あー! パパとママがぎゅーしてる!」

「かのんも~!」

子どもたちが飛んできて、自分も自分もとぎゅーをせがむ。

「ああ。ふたりとも。大好きだよ。ぎゅーだ」

皇樹さんは私を中心に子どもたちふたりを両腕で包み込んだ。

紅葉があとからゆっくりとやってきて「あー……」と気づかわしげに声をあげる。

「柚希、柑音。久しぶりにボールのお部屋に行こうか。そういや新しいおもちゃがあるって聞いたなあ」

紅葉の言うお部屋とは、このマンションに併設されているキッズルームだ。ふわふわのボールや、幼児用の絵本、ブロッククッションなど、共用のおもちゃが置かれている。

夫婦の様子を察して、話し合う時間をくれようとしているのだろう。

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