御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
皇樹さんはゆっくりと体を離し、やるせない眼差しで私を見つめる。

「やっぱりあの場にいたんだな」

視線を逸らし、小さくうつむく。あのときのことを思い出すと、まだ胸の奥がじくじくと痛むけれど、現実から目を逸らして逃げるような真似はもうしたくない。

「彼女のことを、教えてくれませんか」

皇樹さんは静かに頷いて、私をリビングのソファに連れていった。




「――彼女は、追い詰められていたのだと思う。父親の期待を背負い、ハワード家の娘としての役割をまっとうしなければと。俺から気に入られれば父親が喜んでくれると信じていた」

皇樹さんから事情をすべて聞いた。縁談の話はすぐになくなり、ハワード家との取引も白紙になったと。

「彼女とは一度挨拶をしてそれきりだ。恋愛関係はもちろん、体の関係もない」

「メアリーが愛し合ったと言っていたのは……」

「誤解だよ。証拠はと言われると難しいが、君が必要とするなら周囲の人間の証言を集めて――」

「いえ、皇樹さんの話を信じます」

私は彼を信じると決めたのだから、他人の証言などいらない。彼の言葉こそが真実だ。

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