御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
こうして彼の体温を感じていれば、不安が和らぐ。彼を一心に愛していられる。

しばらく彼の温もりで心を落ち着けて、ようやく冷静になったところで。

「……あの、メアリーは」

またひとつ、心配事を思い出して顔を上げた。

「大丈夫でしたか? ちゃんと帰れましたか? 彼女、道に迷っていたんです。もしかしたら、また――」

「大丈夫、彼女はちゃんと車に乗せて送り届けたから。フライトも手配したよ」

心配はなさそうで安堵する。皇樹さんはくすりと笑って私の頭を撫でた。

「まったく君は。もしかしたら恋敵になっていたかもしれない女性のことまで心配するなんて」

「だって彼女、一生懸命でしたから。皇樹さんに会うために、ひとりで日本に来て、日本語もあんなに練習して――」

「そうだね。だから俺は、メアリーを追い詰めた彼らが許せないんだ」

彼の口ぶりから、静かな怒りを感じ取る。皇樹さんは、いったい誰に憤っているのだろう。

「それは……政略結婚を強いたお父様?」

「それもあるのかもしれないが。彼女を利用しようとした人間がほかにいる」

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