御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
昼休憩中に抜け出して待ち合わせのカフェに向かうと、すでに彼女が席について待っていた。

今日は艶やかな着物姿だ。日本を満喫している様子にホッと胸を撫で下ろす。

私を見つけると、にこにこしながら手を振ってくれた。落ち込んでいるかもしれない、そう皇樹さんから聞いていたけれど、彼女は初めて会ったとき同様に元気いっぱいで安心する。

「連絡をくれて、どうもありがとう。その着物、とても素敵ですよ」

そう言って正面に座ると、彼女は細長い箱を差しだしてきた。

「初めての日本ヲ、悲しい思い出にしたくなかったデス。楽しい思い出、作りマシタ」

「これは……私に?」

そう確認して箱を開けると、中には箸が二膳。木目の綺麗な黒い箸と赤い箸が並んでいて、箸頭には『楓』『皇樹』と名前が彫られていた。

「わぁ、立派なお箸! 名前まで」

「お礼デス。カエデには、道を教えてくれたお礼。コウキには、私を自由にしてくれたお礼。私もお揃い、持ってマス」

そう言ってバッグから和柄の箸袋を取す。中には白木の箸が入っていて、『芽愛梨』の文字。愛らしい当て字にほっこりする。

すると、急にメアリーがかしこまり腰を折った。

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