御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
緊急の訪問にもかかわらず、彼はすぐに時間を作ってくれた。ハワード家のご令嬢の来訪に応じないわけにもいかなかったのだろう。

彼は俺たちを社長室に通し、接遇用のソファに促した。まずはプライベートな話になりそうなので、秘書には下がっていてもらう。

『お久しぶりです、メアリー嬢。わざわざ日本に足を運んでいただけるなんて光栄だ』

叔父が流暢なイギリス英語で挨拶をする。メアリーは俺の前でするあどけない女性の振る舞いから一転、良家の令嬢の顔になった。

『あなたが私に訪日するよう促したのでしょう、ミスター・サンジョウ。ですが、とんだ恥をかきました。まさかコウキがすでに結婚していたなんて』

ぴくりと眉をひそめる叔父。『それは誤解だ』と弁解して正面のソファに腰を下ろした。

『まだ結婚などしていない。そうだよね、皇樹?』

『ですが近々入籍するとメアリーには伝えました。この際ですから、ぜひ洸次郎さんにも証人になっていただきたい』

俺は懐から婚姻届を取り出す。折り畳まれた用紙を開き彼の前に置いて、証人欄に人差し指の先を載せた。

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