御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
またしてもありがたい提案。休日、ひとりでふたりを相手にするのは大変なので、紅葉がいてくれるととても助かる。車があると、さらに便利だ。

「楓は買いたいものとか、行きたいとことか、ないの?」

「行きたいとこ……か」

不意に思い出してしまったのは、彼との思い出の場所。もうすっかり忘れたつもりでいたのに、まだ引きずっていたなんて。

とはいえ場所自体に罪はない。子どもも遊べる素敵なところだから、ふたりを連れていったらきっと喜んでくれる。

「ひとつ、行きたいところがあるんだけど……いい?」

そう言って私は、思い出の地を提案した。



次の日曜日、私たちは紅葉の車で海浜公園に向かった。家から東京湾まで約三十分、車を走らせる。

「ほーらふたりとも、海が見えてきたぞお」

運転席でハンドルを握りながら、紅葉が揚々と叫ぶ。柚希も柑音も窓の外に広がる海に釘づけだ。チャイルドシートから必死に身を乗り出して眺めている。

「うみー!」

「はしー!」

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