御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
見るものすべてが初めてで、普段は大人しい柑音ですら大きな声をあげて興奮している。この場所を選んでよかったと、私はこっそり息をついた。

車を駐車場に停めて、浜辺に向かって散策路を進んでいく。

手すりの向こうは海。子どもたちの手を離したらぴょんと海に飛び出していってしまいそうなので、私は柑音の手をしっかりと握る。

柚希の手は紅葉が握っていてくれる。暴れん坊ですぐに駆け出す柚希は、体力のある紅葉が見ると役割が決まっていた。

案の定、ゆっくり歩きに耐えられなくなった柚希が紅葉を引きずるように走り出し、ふたりは砂浜に飛び出して波打ち際に向かっていった。

「柑音も行こうね?」と声をかけてみたら、彼女にしては珍しく目をキラキラと輝かせて頷く。

六月下旬の曇り空。寒くもなく、暑すぎもせず、遊ぶにはちょうどいい気温だ。日曜日ということもあり、砂浜はそれなりに混雑している。ふたりと同じくらいの歳の子も多い。

しばらくすると、砂遊びをしている子どもたちが羨ましくなったみたいだ、ふたりもしゃがみ込んで山を作り始めた。

「こんなこともあろうかと。じゃーん」

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