御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
確信的な口ぶりで言う。とくに幼い頃の皇樹さんしか知らない紅葉にとって、柚希はあの頃の彼、そのままに見えているのかもしれない。

「どうして結婚しなかったの?」

「どうしてって……そりゃあ。相手はあの久道グループの――」

「そもそも、子どもができたって、皇樹さんに伝えてないんじゃない?」

再び黙り込む。沈黙を肯定と判断したのか、紅葉は深く息をつく。

「楓はいつも、優しい嘘をつくよね」

あらかた察して結論に至った紅葉が、やるせなく自身の頭をくしゃくしゃとかきむしる。

「でも、それって本当に相手のためになってる? ちゃんと打ち明けて相談すれば、楓と子どもを優先してくれたんじゃないの?」

それはもちろんわかっているけれど、頑として譲る気はなく、静かに答える。

「真実を伝えれば、彼は必ず苦しむ。きっと自身のすべてをなげうってでも、私や子どもたちを優先してくれたと思う。でも、それは嫌なの。わかるでしょう?」

紅葉は膝の間に顔を埋めて「わかるけどー……わかんない」と不満をあらわにした。

「楓が頑固なことだけは、よくわかってる」

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