御曹司様、あなたの子ではありません！～双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした～

道の反対側から声をかけられ、私は咄嗟に振り向いた。

立っていたのは黒いスーツを身に纏った男性。その脇に止まっているのは白くてスマートなフォルムの高級車。

見るからに品のいい出で立ちをしている男性から、愛する人の面影を感じ取り、呼吸が止まりそうになった。

「……皇樹さん？」

まさかという思いが駆け巡る。

彼は海外にいる。ここにいるはずがない。これは私の願望が見せている幻だろうか。

だが、あれだけ愛した彼を見間違うわけもなく。意志の強さと知性を併せ持つ端正な顔立ちも、気高い立ち姿も、すらりと長く伸びた脚も――幻でもお化けでも人違いでもなく、本物の皇樹さんだと思い知る。

「楓！」

確信を持った声で名前を呼ばれ、びくりと肩が震えた。彼が駆け寄ってきて、すかさず腕を伸ばし私を抱きすくめる。

「ずっと探していたんだ」

久しぶりに聞く甘い低音ボイスに耳の奥が痺れた。

熱烈な抱擁に頭の中が真っ白になって、今自分がなにをしていたのかも吹き飛ぶ。せっかく拾い上げた帽子が、指先をすり抜けて再びぽろりと道に落ちた。

「皇樹さん……どうして、ここに」