御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
子どもたちが疑わしげな眼差しを皇樹さんに向ける。突如現れてママに抱きついた謎の男――不審がって当然だろう。

皇樹さんはどうしたものかと一瞬悩んだようだったが、ふたりの顔を見て動きを止めた。

「この子たちは――」

艶やかな漆黒の髪。とくに柚希の、意志の強い眉と凛々しい目、引き締まった口もと、白いながらも健康的な肌色。

『小さい頃の皇樹さんにそっくりじゃん』――先ほど紅葉が口にした言葉を思い出し、蒼白になる。

……これは、まずい。彼の子どもだとバレるわけにはいかない。

私は咄嗟に「失礼します!」と大きく一礼すると、柚希を抱きかかえ、柑音の手を引き、そそくさとその場をあとにした。

「って、え? か、楓!?」

困惑した声をあげたのは紅葉の方だ。彼までも置き去りにして、私がその場を立ち去ったから。

とにかく逃げなければ、それしか頭にないほど切羽詰まっていた。

「楓! 待ってくれ、その子たちは……!」

背後から皇樹さんの制止する声が聞こえてくるけれど、それすらも無視してひたすら足を速めた。




駐車場に停めておいたオレンジのミニバンの前で待っていると、紅葉が遅れてやってきた。

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