御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
彼は「とにかく」と前置きし、私の額に唇を沿える。

「俺は楓を愛しているし、一生手放すつもりもない」

とびきり甘い蜜のような言葉に震えが走り、彼の体を抱き返す。

『俺と一緒に来てくれないか』――そんな彼からのプロポーズを断ったのは私だ。

今、私は一般企業で働いている。家名が失墜したからには、せめて自立した女性として社会に認められなければ、彼の隣を歩くのに相応しくないと思ったから。

彼と離れ、ここ日本で仕事に集中すると決めた。プロポーズを断ってまで日本に残るからには、寂しいなんて甘えたことは言ってられない。

けれど、そんな強がりさえ見透かすように彼が囁く。

「一年だけ、待っていてくれ」

彼は自身のポケットから手のひらに収まるくらいの小箱を取り出す。

「一年経ったら帰ってくる。だから――」

そう言って小箱を開くと、中には大粒のダイヤの載ったリングが収まっていた。

夕日を受けて強くオレンジ色に輝くそれに、私は息を呑む。

「愛している、楓。結婚しよう」

見上げれば、真摯な眼差しがあり胸が熱くなった。

「嬉しい……」

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