御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
「急に逃げるんだもんなあ」

後頭部をかきながら、まいった顔で歩いてきて、車のロックを開錠する。

「ごめん。慌てちゃって。……その、皇樹さんは?」

「子どもたちの手前、帰ってもらったよ。話なんてできる状況じゃなかったし」

そう言ってポケットから一枚の名刺を取り出す。

【久道皇樹】の名前の上に会社名と役職名がたくさん並んでいる。今、彼はグループ内の多くの企業の代表取締役社長を務めているようだ。

無事に久道グループの代表になれたのかな……?

だがそれは同時に、良家の令嬢との政略結婚がうまくいったことを示していて、なんとも言えない気分になる。

「いらない。捨てて」

名刺を受け取らず、柑音をチャイルドシートに乗せる。

紅葉は眉をひそめながらも、ここに名刺を捨て置くわけにもいかず再びポケットにしまい、反対側のドアから柚希を乗せた。

「わるもの、やっつけた?」

きりっとした顔で尋ねてくる柚希に、紅葉は苦笑して頭を撫でる。

「だから悪者じゃないって。バイバイしてきただけだよ」

柚希はちょっぴり不満そうな顔。私と紅葉も車に乗り込み、自宅に向かって車を走らせた。

いざ走り出すと案の定、ふたりはすぐさま寝ついてしまった。たくさん浜辺で遊んで疲れていたのだろう。

ふたりが眠っているのをバックミラーで確認し、紅葉が尋ねてくる。

「本当に連絡、取らないでいいの?」

「うん」

その返答には微塵も迷いがない。

「そう」

紅葉はさらりとそう応じて、運転に集中した。





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