御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
第二章 優しい許嫁の隠された情熱
初めて彼と会ったのは五歳のとき。久道家で開かれた会食の場で、皇樹さんを紹介された。
「彼が久道皇樹さん。あなたの許嫁よ」
正面の席には、きちんとネクタイを締めた凛々しい男の子。同じ八歳の椿兄よりもずっと礼儀正しく、落ち着いた印象だ。
これまで出会った男の子たちとは一線を画す佇まいと、『許嫁』という聞きなれないワード。私はきょとんと目を瞬かせる。
「お母さん、イイナズケってなに?」
兄弟の中で唯一会食に同席した紅葉が遠慮なく尋ねると、母は「将来結婚する方のことよ」と説明した。
私はこの人と結婚するのだと、ぼんやりと納得しながら食事をいただく。
久道家のシェフが作るお子様用フレンチを堪能し、嫌いなにんじんも嫌がらずにきちんと食べ、デザートのフルーツゼリーを味わい終えたところで。
「お父様。楓さんと紅葉さんに屋敷をご案内してもよろしいでしょうか?」
皇樹さんが口を開いた。これまた椿兄と口調が全然違っていて驚く。
皇樹さんのお父様はにっこりと笑って応じた。
「それならば楓さんをご案内しなさい。紅葉さんとご両親は私が案内しよう」
「わかりました」