御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
皇樹さんは立ち上がり、私の座るところまでやってくると、手を差し出した。

「行きましょう、楓さん」

五歳の私には『案内』の意味すらよくわかっていなかったが、ただ差し出された手を本能的に握り返して、彼のあとについていった。

久道家の屋敷は広い。天井の高いエントランスに大きな食堂、厨房はシェフたちで賑わっている。そのさらに奥にはお遊戯ができそうな広いホールと、緑豊かな中庭があった。

「楓さんは花がお好きですか?」

かしこまった尋ね方をされて、緊張しながら「すきです」と答える。

「でしたら、庭園を散策しましょう」

私の手をきゅっと握って、中庭の一角にあるレンガの小道をゆっくり歩く。五月の中旬、庭園には色とりどりの薔薇が咲いていて、見頃を迎えていた。

花を見るのも楽しいけれど、私が気になるのは皇樹さんだ。

大きな瞳にきりっとした眉、幼いながらも精悍な顔立ち。教養の高さがにじみ出る振る舞い。ずっと見ていても飽きることがなく、むしろ目が離せなくなるような魅力を放つ〝特別〟な男の子。

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