御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
それを見た皇樹さんは、ふんわりと微笑み、ゆっくりと私を抱きしめた。胸の前で抱えている花束を潰さないように、そっと丁寧に力を込めて。

「楓は優しいんだな。大丈夫、俺は悲しくないよ」

皇樹さんがなにを考えていたのか、さっぱりわからなかったけれど、彼のぬくもりに包まれて背中をトントンされるのは、心地よかった。

なんの心配もいらない、そう思わせてくれる抱擁だ。

「結婚なんてよくわからないって、正直思ってたんだけど。相手が楓でよかった」

ひとり言のように皇樹さんがぽつりと独白する。その言葉の意図をきちんと理解できたわけではないけれど、少なくとも私も結婚するなら彼がいいと思った。

それから私たちは両親や紅葉の待つ客間に戻った。

両親は薔薇の花に驚き感動したけれど、それ以上に驚いたのは、私が彼を「コウキくん」と呼びタメ口を利いていたことだ。

一方、皇樹さんの方はというと、父親の前ではきちんとした敬語に戻っていた。なかなか賢い子どもである。

かくして、会食を終えて自宅に戻った私を待ち受けていたのはお説教だった。以来、みっちりと敬語を叩き込まれ、『皇樹さん』と呼ぶように徹底された。




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