御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
しばらくは年に一度の頻度で久道家に招かれていた。紅葉が来たのは最初の数回で、あとは両親と私だけの会食だ。
私が中学生になる頃には家族で会食する習慣はなくなってしまったけれど、代わりに皇樹さんが遊びに連れていってくれたり、近所でお食事をしたり、会う機会を作ってくれた。
その頃の私は、恋というものを考えるようになっていた。休み時間、クラスメイトとする話はもっぱら恋バナだ。
私が通っていた私立中学には、婚約者のいる良家のお嬢様なんかもいるので、早くから結婚相手が決まっているこの境遇を不思議に思ったことはない。
ただ、ほかの子は婚約者のことを『恋人』と呼ぶ。私もそう呼んでいいのだろうか?
私と皇樹さんの関係は兄と妹のように健全で、あるいは保護者と子どものように一方的で、そういう雰囲気にはならなかったから。
少しずつ、ほんの少しずつ縮まっていく距離。同時に決して埋まらない溝があることも自覚していて、次第にもどかしくなっていった。