御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
確信的な質問に、彼は私の言わんとしていることを理解したみたいだった。

「……子ども扱いしているように思わせてたなら、ごめん。楓は年下で、まだ十代だし、俺がリードしてやらなきゃっていう意識は確かにあって」

若干動揺しながらも、ぽつりぽつりと言い訳じみた説明を始める。

「もう十九歳なので、一応成人ですっ」

お酒やタバコはダメだけど、成人年齢は超えている。思い切って反論してみると、彼は「そうだった」と苦笑した。

「じゃあ、少しだけ大人の恋人みたいなこと、しようか」

急に彼の目つきが変わったから、ドキリとした。今まで私に見せてくれなかった顔で、私を道の端の、人気の少ない場所に誘い込む。

首筋に回ってきた手が、するりとうなじを撫でる。ひくりと体が揺れ、気がつけば呼吸が止まっていた。

ゆっくりと近づいてくる顔。促されるように目を閉じて、次の瞬間、柔らかな感触が唇に触れた。

パズルがパチリとはまるみたいに、閉じた唇と唇が凹凸にそって重なり合う。

これがキス。これが大人の恋愛――ようやく欲しかったものを手に入れられた気がする。自分が女性として認めてもらえたのが嬉しい。

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