御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
何秒くらいそうしていたのだろう。私が呼吸困難になる前に、唇は離れていった。

「この続きは二十歳になってからだよ。……いいね?」

目を開けると艶っぽい眼差しがあって、すっかり満たされてしまった私はこくりと頷く。

そこから先の記憶はぼんやりとしている。大好きな人とファーストキスを交わして、完全に舞い上がっていた。

その夜、家に戻ってからも、何度もリッキーのチャームを見つめては抱きしめたり、キスのリプレイをしたり、とにかく浮かれていたことだけはよく覚えている。




「キスだけ?」

翌朝、大学で顔を合わせた瀬那に自信満々に惚気た私だったが、返ってきた言葉はそれだった。

「エッチはナシ? ホテルに誘われたりとかは?」

ぶんぶんと私は首を横に振る。

「キスはどんな感じ? ちゃんと大人のキスだった?」

大人のキスとは……? ことんと首を傾げると、友人の顔に憐れみがにじんだ。

「やっぱり楓、子ども扱いされてるんじゃない? チューだけなんて、完全に中学生レベルじゃん。ちなみに私のファーストキスは小六だった」

「小六以下……」

ガーンという絶望的な音色が頭の中で響く。

< 59 / 255 >

この作品をシェア

pagetop