御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
ほかの男性を好きになんてなれっこない。そう思った瞬間、自分で納得してしまった。

「……そっか。だったら悩んでも意味ないんだ」

どちらにせよ、私には皇樹さんしかいないのだから、悩むだけ時間の無駄。

彼が『二十歳になってから』と言ったのだから、それを心の支えに前に進んでいくしかない。二十歳まであと一年もないのだから、時間が解決してくれるはず。

そう自身に言い聞かせて、今にも暴走しそうな恋心を抑え込んだ。



衝撃的な出来事が私を襲ったのは、二十歳になる直前、大学二年生の夏のこと。

家業の今後について大事な話があると前置きした父が、家族全員を居間に集めた。

「経営から手を引くって、どういうこと……!?」

母の悲痛な声が居間に響き渡る。

一枚木のテーブルを囲んで、床の間の前に父、正面に母、その左右を取り囲むように私と四人の兄弟たちが座っている。

「今のままではいずれ芙芝紡績は倒産する。この提携を受け入れるしかない」

ここ数年の経営不振を淡々と説明する父。その一方で母は感情的だった。家業の赤字をずっと隠されていたわけだから、怒るのも当然なのかもしれない。

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