御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
「提携って……吸収の間違いでしょ!?」

先方は負債を引き継ぐ代わりに、経営権も渡せと言っている。

その代わり芙芝紡績の名前は残してくれるし、従業員たちも今のまま雇用してくれるそうだ。

「芙芝の名が消えるよりはマシだ。従業員たちも路頭に迷わなくて済む」

「でも、あなたが経営者じゃなきゃ意味がないじゃない! それに、この子たちはどうなるの!?」

いずれは後を継ぐ予定で専務をしている蓮兄も、それを支える役職に就くはずだった柊兄も椿兄も、みな職を失ってしまう。経営一族という輝かしい肩書きは消え失せる。

しかし、心配する母をなだめるかのごとく口を開いたのは蓮兄だった。

「俺たちはそれなりの役職で雇用してもらえるそうだ。経営者とまではいかないけれど」

そのひと言に母は目を剥く。子どもたちが自分より先に事情を知っていたのがショックだったのだと思う。

私や母と同様、蚊帳の外に置かれていた紅葉も「蓮兄たちは知ってたんだ」と口を挟んだ。

蓮兄はこくりと頷き、柊兄と椿兄も「はっきり聞いたわけじゃないけど」「さすがに企画室で働いていれば気づくよ」と苦笑した。

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