御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
「要するに、父さんが長年続けてきた経営手法を一新したいらしいんだ。業界も昔と今では変わってきている。変革が必要だっていうのは、俺も同意見だよ」

父も納得はしているのか、黙って目を伏せる。考え抜いた末の結論なのだろうと私は思った。

「もっといい条件で買い取ってくれる会社はないの!?」

「ないよ。こんな赤字の膨らんだ会社、買い取ってくれる物好きなんて」

ヒステリックな母に蓮兄が答える。蓮兄は社長の道が絶たれたのだから傷ついてないはずがないのに、随分冷静なところを見ると、これまで父と何度も話し合って決めたことなのかもしれない。

「芙芝の名は……どうなるのよ。代々続いてきた経営一族としての歴史は……!」

嘆く母に、もう蓮兄は答えなかった。人一倍プライドの高い母は、テーブルの上に突っ伏す。

「紅葉と楓の学費については心配するな。大学を卒業させる程度の蓄えはある」

そう静かに漏らした父に、蓮兄が言葉を添える。

「っていうか、うちは働き手が三人もいるんだから。妹弟たちの学費くらいはどうとでもするよ。楓も紅葉も、金の心配なんてしないで、進学でもなんでもやりたいことがあったら言うんだぞ」

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