御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
柊兄と椿兄も頷く。頼もしい兄たちを持って、私たちは幸せものかもしれない。

ふと紅葉が、「ところで」と切り出す。

「楓の結婚はどうなるの? 許嫁、ってやつ」

そのひと言にびくりと肩が震えた。皇樹さんとの話に波及するとは、浅はかにも思い至らなかったのだ。

「……白紙だろう。天下の久道家が、没落した家を受け入れるはずがない」

父の言葉に目の前が真っ暗になる。

私は皇樹さんの許嫁ではなくなる。これまで皇樹さんの隣にいることが当たり前だったのに、もうその権利はない。

「……楓」

紅葉が心配そうに私の肩を叩くけど、応じる余裕はなかった。



話を終えて、私はぼんやりとしたまま自室に戻った。

許嫁の解消については、提携が公になった際に父から久道家に説明するつもりのようだ。

皇樹さんは今、社会人一年目。久道グループの中心に位置する久道商事に入社して、後継者となるために経験を積んでいる。

入社してすぐ人事部に配置されたそうで、充実した毎日を過ごしていると言っていた。

そんな忙しい中でも皇樹さんは【夏休みは少し遠出しようか】【次はどこに行きたい?】といつも通り声をかけてくれる。

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