御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
普段の私なら嬉しいとはしゃいでいたところだけれど、別れが目前に迫っている今は【ちょっとテストが忙しいので】【考えておきます】と濁すしかない。

大学のテスト期間が終わり夏休みが始まるのと、提携の話が公になるのは同時だった。

その日、私はさよならを告げるため、皇樹さんの会社近くのカフェに出向き、仕事終わりの彼を呼び出そうとした。

けれど、面と向かってさよならを言う自信がなく、十九時近くになっても、連絡をする勇気が出ない。チャット画面には【仕事終わりに、少しだけ会って話せますか?】というメッセージが打ち込まれていて、あとは送信ボタンを押すだけなのに。

カフェに入ったタイミングで注文したアイスキャラメルラテは、もう氷すら溶けてしまった。

……やっぱり、直接会うのはやめて電話にしよう。

結局最後まで覚悟ができず、グラスを返却代に戻し、店を出た。

七月の下旬、十九時になっても空はまだほんのり明るい。だが時間も時間だ、十五分と経たないうちに日は完全に沈むだろう。

高層ビルに囲まれた大通りを駅に向かってとぼとぼと歩いていると。

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