御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
少し先の路肩に黒い高級車が止まり、後部座席からスーツ姿の男性が飛び出してきた。

「楓!」

皇樹さんだ。高級車の送迎に加え、身なりや立ち姿もいつの間にか御曹司然としていて見違えた。

「皇樹、さん……」

その秀麗さが追い打ちをかける。もう私は彼の隣に並べるような人間じゃない、そう実感し、気がついたら逃げ出していた。

「楓……!?」

動揺した彼の声が背後から聞こえてくる。でも面と向かって話す勇気もなく、なりふり構わず走った。

息が切れて立ち止まった場所は、オフィス街の真ん中にある公園。ここまでくればさすがに追ってはこないだろう。

都会のオアシスとして普段は賑やかなその公園も、この時間帯になると人がまばらで静まり返っている。

緑に囲まれた散策路を歩きながら荒くなった呼吸を整えていると。

妙に速くて、硬い足音。それが革靴の音だと気づき、びくりとして振り返った。

「楓!」

「皇樹さん!」

まさかスーツでここまで追ってくるなんて。驚いて再び逃げようとしたとき、腕を掴まれた。

「逃げないで」

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