御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
父は援助を断ったらしい。久道家に支援をお願いすることもできたのだろうけれど、プライドの高い父は潔く経営から退くことを決めたようだ。

彼は私の手をとって、ゆっくりと夜の散策路を歩く。

追いかけっこをしている間に、あたりはすっかり暗くなってしまった。

「許嫁の解消も提案されたと聞いている」

ついに別れを切り出される――泣き出したいのを我慢して彼の言葉を待つ。

しかし、切り出されたのは、予想の斜め上を行く言葉。

「そもそも、〝許嫁〟って言葉自体、俺はよくないと思っていて。親の決定に従うだけの、意思のない結婚をしたくないんだ」

やはり彼は最初から、私と別れるつもりでいたんだ。私を女性として――パートナーとして見ていなかった。

「そう、だったんですね」

芙芝家の家格以前に、皇樹さんとの別れは逃れようがなかったのかもしれない。どこかあきらめがついて、私は彼の手を離すと深々と頭を下げた。

「長い間、お付き合いくださりありがとうございました」

思わずほろりと目から涙がこぼれ落ち、夜と同じ色をしたアスファルトに吸い込まれていく。

「え、楓……」

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