御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
私の手を寒さから守るように強く握って隣を歩く。さりげなく風上に回って、自身の体を盾にしてくれていることに気づかないわけがない。

「風邪、引かないでくださいね?」

「俺は大丈夫だけど――」

そう言いかけてジャケットの前を開くと、自身の懐に招くように私を包み込んだ。

「このあと、温めてくれると嬉しいかな」

「皇樹さん……」

この先を求めるかのような意味深な台詞と、艶めいた眼差し。過剰なスキンシップ。

……今までと、全然違う。

取り払われた一線。私と彼は特別な関係なのだと、言葉から、仕草から、触れる彼の温もりから伝わってくる。

「キス、していい?」

周囲に誰もいないことを確認すると、そう前置きして、私の返事を待たずに深いキスを施す。

楓は今この瞬間から俺のもの、そう思い知らせるかのように、激しい大人のキスで甘く蕩かされてしまう。

美しすぎる夕焼けと海と夜景、それ以上に、皇樹さんの態度から伝わってくるメッセージが嬉しかった。




「う……ん……」

その日の夜。私は彼が用意してくれたホテルのスイートルームで、初めての夜を過ごした。

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