御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
父は芙芝紡績から完全に手を引き早期退職、三人の兄たちはそれぞれ芙芝紡績の部長、課長クラスに就いている。

弟の紅葉は学生時代にデイトレードで成功を収め、その財を元手に投資家に。……しかし、父は安定した職業に就けないならば出ていけと激怒。結局、紅葉は家を出て自立する道を選んだ。

父には内緒で紅葉の新居を訪ねたら、都心の高層マンションに住んでいて驚いた。家族向けの広々とした2LDK、その部屋も投資用を兼ねているそうで、時期が来たら売ると言っていた。

紅葉が家を出るとき『なにかあったら頼って。力になるから!』なんて偉そうに言った私だけど、頼ってもらえる機会は当分なさそうで、安心すると同時にちょっぴり寂しくもある。

そうして就職から一年が経ち、仕事終わりに皇樹さんとの待ち合わせに向かうと、車の助手席に大きな花束が置かれていた。

「えっ……どうしたんですか? そのすごい花束は……」

「もちろん楓に。一年間、頑張ってたから」

春をたくさん詰め込んだような色鮮やかな花束。花を用意してくれたのはもちろん嬉しいが、その気遣いに胸がいっぱいになる。

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