御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
そんな甘いことを言うから、私は花束に顔を埋めて「はい」と答えるので精一杯だった。



あの頃の私は幸せすぎた。一生分のハッピーを使い切ってしまったのではないかと思うくらい、彼と過ごす時間は満ち足りたものだった。

それから二年。転機は突然訪れた。

「父の具合が、あまりよくないんだ」

そう切り出してきた皇樹さん。デートの帰り道、私を車で家の前まで送り届けながら、運転席の彼が静かに説明する。

もともと彼のお父様は持病を持っていると聞いてはいたが、最近では仕事に障りがあるほど体調が悪いらしい。

「十年かけて代替わりの準備を進める予定だったんだが。悠長なことは言ってられなくなった」

「じゃあ……予定より早く皇樹さんが代表に? それとも、ほかの方が代表になるんですか?」

「一時的に叔父が代表に就く案も出たが、それは父が許さなかった。叔父は自分が代表の座についたら、次の代表に実の息子を指名するだろうから」

一度代表の座を譲ってしまったら、もう戻ってはこない。皇樹さんに対してマイナスにしかならない決断を、彼のお父様が許すはずがない。

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