御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
「代表の座に固執するわけじゃないんだが……父の期待には応えたい。後を継げるように手をかけて育ててもらったから。俺なりに努力してきたつもりだし、これまでの自分を否定したくないんだ」

その言葉から、彼なりの誇りを感じ取る。

「二十八年間、頑張った証明ですもんね」

私が大きく頷くと、彼も少し照れくさそうに「ああ」と答えた。

「これまで身につけてきた知識と経験で、父たちが大切に培ってきたものを守りたい」

一族が代々受け継ぎ発展させてきた巨大企業、その舵取りをひとりで担う重責は計り知れない。だからこそ、私は全力で彼を応援したかった。

「力になれることがあるなら、なんでも言ってください。といっても、私にできることと言えば、見守るくらいかもしれませんが」

すると、彼は額を押さえて沈痛な面持ちになった。そこまで困らせるようなことを言った覚えはないのだが。

「皇樹さん?」

「……この流れで切り出す俺は、詐欺師みたいだ」

ハンドルにもたれ顔を伏せて自嘲する。なにかお願いがあるんだ、そう気づき、私は助手席で姿勢を正した。

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