御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
「すぐに就任するにしても、若さはどうしてもデメリットになる。株主や投資家たちの中には年齢を気にする人間もいるから。だから、デメリットに負けない強みがほしい」

「強み……ですか?」

「実績とコネクションだ。今考えているのは、海外支部の経営規模拡大と、現地の陣頭指揮。今後重要な拠点となるイギリスで腕を振るい、現地の投資家や影響力の強い経営者にコネクションを作ることで実力を示せる」

皇樹さんは顔を上げると、真剣に私を見つめた。

「一年間、イギリスに行こうと思ってる」

……ああ、そうか、と私は納得した。私ができることは、彼に対してなにかをする、ではなく。

ただ彼を信じて待つことなんだ。

そう理解し、ふっと笑みをこぼす。

「わかりました。いってらっしゃい」

求められていた言葉を口にしたはずなのに、なぜか彼は不満そうに唇を尖らす。

「……聞き分けがよすぎないか? もう少し寂しそうにしてくれてもいいだろ」

どうやら彼は『わかりました』以上に『寂しい』と言ってほしかったらしい。行かないでと言ったら困るくせに。オトコゴコロは難しい。

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