御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
「楓。そんなに悲しそうにしているのは、俺のプロポーズを断ったから?」

「ごめんなさい、私、どうしたらいいか――」

彼のそばにいたい。でも、今の私では彼に相応しいパートナーになれない、矛盾だらけの身勝手な決断だ。

「……でも、きっと成長して皇樹さんを追いかけます。だから――」

待っていてほしい、そうお願いしようとすると、柔らかく微笑んだ彼が私の隣に腰を下ろした。

「悪いけど俺は振られたなんて思ってないし、楓を手放すつもりもない」

頬に触れられ、驚いて彼を見上げる。待ち受けていたのは、壮麗な瞳だ。

「たった一年なんて一瞬だ。この先、何十年も君と一緒に生きていくことを思えば」

何十年も、私とともに歩みたいと思ってくれているのだろうか。それだけで胸がいっぱいになる。

「皇樹さん……」

いつも以上に優しいキスが降ってくる。うっとりと酔いしれ目を開ける頃には、不安は和らいでいた。

「プロポーズは取っておく。だから、今はお互いにできることをしよう。一緒になるのはそれからでも遅くない」

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