御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
皇樹さんとはまた違う、人好きのする顔でにっこりと微笑む。

「アポイントもなく不躾にすみません。もしよければ、このあとお時間をいただいても?」

私は「もちろんです」と答え、彼とともにオフィスビルを出た。

ビルの前には見るからに高級な車が止まっていて、品のいい運転手が後部座席のドアを開けて待ってくれていた。

皇樹さんの叔父とはいえ、初対面の男性の車に乗るのは不用心だろうか……そんな私の心中を読んで洸次郎さんが尋ねてくる。

「ご不安でしたら、ご両親にも同席していただきましょうか?」

とんでもなくこじれる予感がして、「いいえ、大丈夫です」と促されるまま車に乗り込んだ。

両親は久道家に期待するなと言っていたし、なにを口にするかわからない爆弾のような両親を呼ぶくらいなら、ひとりで話を聞いた方がずっとマシだと思ったのだ。

「ゆっくりと話せる場所にご案内します。なに、五分程度ですよ」

そう言って案内されたのは、有名ホテルのロビーラウンジにある個室だった。特別な接遇用の部屋らしく、お茶とともにサンドウィッチやプチガトー、スコーンなどの軽食がついてきた。テーブルの上が賑やかすぎてびっくりする。

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