御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
「仕事を終えたばかりで、お腹が空いていますよね? よろしければお食事も――」

「い、いえ、充分すぎますのでっ……!」

洸次郎さんが遠慮なさらず、とサンドウィッチをひと口食べて見せた。私が手に取りやすくしてくれたのだろう、気さくな人だ。

洸次郎さんは自己紹介が遅れてすみませんと前置きして、ご自身の立場を説明してくれた。

「久道グループの中核は久道商事、そして久道銀行や証券、保険などの金融系です。それらは私の兄の洸一が代表を務めていて、グループ全体を治めていると言っても過言ではない。私はその他の雑多な企業の代表、指揮を任されています」

雑多と言っても、ひとつひとつの規模が芙芝紡績に匹敵する。謙遜してはいるが、辣腕がうかがえる。

「皇樹の父親のことは聞いていますね?」

私はこくりと頷く。持病の具合が芳しくないことも、跡継ぎを急がなければならない状況も。

「皇樹は幼い頃から教育を受け、経営者としては卓越している。私なんかよりずっと優秀なんですよ」

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