御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
自慢の甥っ子、といったふうににっこりと微笑む。しかし次の瞬間には目を細め、憂いに満ちた表情をした。

「だが、あの若さだ。十年後であれば、後を継ぐことになんの問題もなかったのですが」

洸次郎さんは静かにコーヒーを口に運び、ため息を漏らす。私も彼に倣って紅茶をいただきながら、じっと彼の話に耳を傾けた。

「まだ二十代のひよっこがトップに立つなんてとんでもないと不満を漏らす連中も多いのですよ。だったら俺がやると名乗り出る者も。そういう連中ほど己の力量を自覚できず、経営の仕事をわかっていない。我ら経営一族との教養や品格の差が理解できないのです」

嘆かわしいとでもいうふうに、遠くを見つける。その冷ややかな眼差しを見て、彼の腹の底に隠し持つ冷徹さを推し量り、身震いがした。

「この巨大グループを統率するには、久道家に代々受け継がれてきた独自のノウハウが必須なのです。一族外の人間に経営の舵を奪われたら、それこそグループ存続の危機だ」

それは私も聞いたことのある話だ。皇樹さんは幼い頃からこの独特な企業群を御すための術を叩き込まれているからこそ、代表になれるのだと言っていた。

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