御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
「つまり……代表の座が狙われていて、危険だと?」

洸次郎さんは「ええ」と肯定し、目を鋭くさせる。

「皇樹が満場一致で代表に就任するには、周囲を納得させる建前がいるのです」

「建前というと……実績とか?」

しかし洸次郎さんは首を横に振る。

「大急ぎで実績を積み上げようとしたところで、一年や二年じゃたかが知れているんですよ。それより手っ取り早い方法がある」

そう前置きして、彼が静かに切り出した。

「政略結婚です」

彼のひと言に、ティーカップを持つ手が震えた。ソーサーに置こうとするもうまくいかず、カシャンと音が鳴る。

「……し、失礼しました」

ソーサーに紅色の液体がこぼれたのを見て、脇に控えていたスタッフがすぐさまティーカップごと取り換えてくれる。

洸次郎さんは感情のない目で私をちらりと一瞥すると、話を続けた。

「皇樹が代表になれば、良家とのコネクションが手に入る、あるいは高名な投資家一族との縁ができる――そんなわかりやすい構図があれば、周囲は納得してくれると思いませんか?」

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