御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
私が皇樹さんと別れなければ、彼は代表になれないかもしれない。長い間続いてきた久道家の歴史が彼の代で途絶えてしまう。

洸次郎さんはグループの危機とまで口にしていた。職を失う社員も出てくるだろう。

加えて、いつか生まれる子どもたちまでみじめな思いをすると言われたら、『彼と一緒にいたい』なんてワガママを貫き通す自信はなかった。

私と結婚さえしなければ、皇樹さんも、彼の周囲の人々も、みんな幸せになれるというのなら……。彼への愛しさと現実を天秤にかけて、それでも望みが捨てきれず悶々と悩み続ける。

あのあと、洸次郎さんは『もうひとつだけ解決策があります』と前置きして、私に提案してきた。

『皇樹に次期代表の座から降りるように説得していただけませんか? 私が代表となれば皇樹は自由になれる。あなたと幸せな家庭を築くこともできるんです』

そんなこと、できるわけがない。その提案だけはその場ですぐにお断りした。

皇樹さんはお父様の跡を継ぐために、幼い頃から一生懸命頑張ってきたのだから。

八歳の時点ですでに敬語を使いこなし、マナーを熟知していた彼。今になって思えば、厳しい教育を受けていたのだと思う。まだ幼い彼にはつらかったはずだ。

その苦しみを、ようやく手に届きかけている希望を、私と一緒になるために捨ててほしいだなんて絶対に思わない。

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