御曹司様、あなたの子ではありません!~双子ベビーがパパそっくりで隠し子になりませんでした~
さすがに私の一存では決められない。とはいえ、連絡を取ろうにも皇樹さんに繋がるものはすべて捨ててしまった。

仕方なく洸次郎さんに電話をして、どうしても彼と連絡を取りたい、もう一度考えさせてほしい、そうお願いすると、冷酷な言葉が返ってきた。

『実は、皇樹はすでに、イギリスに住む良家の令嬢との婚約を進めているのです』

胸に強い痛みを感じた。すでに皇樹さんの心の中に、未来に、私はいない。

いや、もしかしたら、あえて私を忘れようと努めているのかもしれない。彼は夢のために前に進むことを選んだ。私が失踪した、その行動の裏にある願いを汲み取ってくれたのだ。

けれど――。

『楓さん。まだ後ろ髪を引かれているのですね。気持ちはわかります。あなたが身を引いたことを思えば、皇樹への愛が本物だとわかる』

受話口から洸次郎さんの、憐れみを含んだ声が響いてくる。

『皇樹の将来を思い距離を取ってくれた、あなたの行動はとても尊く、正しいものだったと思います』

洸次郎さんの声に涙が混じり、再び心が揺れ動く。

だが、私も引き下がるわけにはいかない。私が我慢するだけならまだしも、お腹の中に宿るふたつの命をあきらめるわけにはいかないのだ。

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