告白



3ヶ月が経過しても真子との関係に大きな変化はなく、康二も食事の約束に対して特に気にしなくなっていた。しかし、その後、不思議な出来事が頻発し始める。真子の愛車との「シンクロ」があまりにも多発したため、康二はエクセルでデータを取り、分析することにした。2021年4月から7月にかけて、月の3分の1もの頻度でシンクロが起こっていた。そして、夢の中でも真子がしばしば現れるようになった。時が経ち、2022年3月、かつての約束が現実となる。その日は特に奇妙だった。共通の友達を通じて食事の段取りが組まれたものの、真子は用事があり参加できないことに。しかし、食事の一時間前、真子から電話がかかり、「私、行きます」と言われ、突然の参加が決まった。こうして約束は果たされたが、それ以降、康二と真子の間に進展はなかった。一方、康二は久しぶりに瑠美と焼肉に出かけ、彼女がとても喜んでくれたことに嬉しさを感じた。瑠美との縁がさらに強まる中、康二は過去の縁にも手を伸ばし、浩美と共に働いていた松田由佳に20年ぶりに電話をかけ、食事に誘った。由佳は離婚しており、彼女の元旦那はかつて康二の上司である。そんな折、突然の悲報が康二を襲った。瑠美が救急車で運ばれたという知らせが入ったのだ。康二は心臓がドキリとした。彼女の容体はどうなのか、何が起こったのか不安が募る。すぐに病院へ向かう決心をし、彼女のことを思いながら車を走らせた。瑠美との楽しい時間が思い出され、彼女の笑顔が頭に浮かぶ。康二は一刻も早く彼女に会いたい気持ちでいっぱいだった。病院に着くと、緊張感が漂う待合室で、友人たちが心配そうに集まっていた。康二は彼らの様子を見て、事態の深刻さを感じた。瑠美が無事であることを祈りながら、彼女のいる部屋に向かう準備をした。康二は、病院の待合室で眠りに落ち、夢を見ていた。浩美、瑠美、真子、そして由佳—彼女たちが迷宮のように絡み合った人間関係が浮かび上がってくる。どの道を進めば良いのか分からず、彼はただ立ち尽くしていた。
「これは統合失調症の罠なのだろうか」と、彼の心の中に疑念が渦巻く。夢の中で彼女たちが語りかけてくるが、その言葉はどれも彼にとっては曖昧で、真実を見極めることができなかった。自分の感情や思考が複雑に絡み合い、彼は不安に駆られた。康二は、夢の中で彼女たちの顔を一つ一つ思い浮かべる。瑠美の優しい微笑み、真子の神秘的な存在感、浩美との過去の思い出、そして由佳の温かさ。彼らとの関係が、今の自分にどんな影響を与えているのかを理解しようとしていたが、答えは見つからないままだった。迷宮の中で彷徨う康二は、心の奥底で何か大切なことを見逃しているのではないかと感じ始める。彼は夢から覚めると、何が本当なのか、何を選ぶべきなのかを考え続けていた。
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