闇の龍神様と癒しの神子
昨晩は十六夜が先に寝てしまったので、榛名は1人で眠った。
榛名としては昨晩はありがたかった。


(お役目のため太らなきゃね)

「おはようですぅ」
「手伝うの」
ムクとミクが鹿から人型になる。

食料品と調理家電や器具はかなり買っもらった。
神の力とかで電気ガス水道のライフラインは使えるとムクとミクに聞いたので早速、使わせてもらう。

「神の力万能ね」
レンジで温めたレトルトのリゾットをいただく。

「ん、おいしい」

島では犬用の餌皿に米と味噌汁、おかずが混ぜたものがご馳走だった。酷い時は腐った野菜やカビの生えたパンなどだった。生きるために与えられたものは食べるしかなかった。消えたいのに結局、生にしがみついていたのだ。

「十六夜様に感謝しなくちゃ」
「ハルナ様は十六夜様と番にいつなるですぅか?」
「え?」

「ハルナ様は神通力あるなの。ボクらと同じなの」
「2人も?十六夜様の使いって?」
「ボクらは東丿島にいた鹿なの〜」
「ママが死んで鳴いて飢え死にしそうな時に十六夜様が使いとして神通力を与えて助けてくれたですぅ」

「十六夜様は優しいんだね」
(野生動物たちが銃を弾くほど妙に剛力筋肉質なのは十六夜様の力だったんだのね?)


「ハルナ様も優しいですぅ」
「そうなの。十六夜様はずーっと孤独なの。ハルナ様は十六夜様の孤独を埋めてくれる方なの!」

「私は……優しくないよ」
(ただの生贄…八重さんの代わりにはなれない)

「十六夜様から番にはしないって言われてるの。私は生贄だよ」

ムクとミクはむぅぅ〜と頰を膨らませ足をジタバタさせた

「十六夜様は男の恥なの!」
「十六夜様ちゅーした責任取れですぅ!」
怒る姿がまた可愛らしい

「番にしないじゃなくて、させるですぅ!」
「ハルナ様が十六夜様に番にしたいってを言わせればいいの!好きにさせればいいの!」

(好きにさせれば…?)


「あー十六夜様ですぅ」

「ハルナ様!早くちゅーするなの!」

「十六夜様、おはようございます」
『ああ。キスしにきたんだがメシは終わったか?』
「はい」

いつものように抱きしめられ激しいキスをされた。

榛名の心は複雑だった。

十六夜から唇を離されると
『見えるか?』
目の前に手を差し出さた


「黒い煙ですか?」
『ああ。これが闇だ。だがお前の力で僅かながら消えたんだ』
「役に立てるなら良かったです」


『今日は買い物に行くか?』
「暫くは大丈夫です。十六夜様は普段どうされているのですか?」
『どうもしない。寝てるだけだ』
「そうですか……」

(会話が続かない…)



榛名はボーッとムクとミクが落ちたドングリを食べているのを眺めていた。

「でっかいドングリですぅ〜」
「ボクもでっかいの食べたいなの〜」

楽しそうに落ちては食べを繰り返していた。

「そういえばまだ1月なのに全然寒くないなぁ〜」

独り言のつもりだったがムクとミクが答える
「十六夜様の力ですぅ」
「神さまに捨てられても神獣の力は維持してるの。だから島の中は丁度いい気候なの!」
「ドングリや他の木の実も年中食べ放題ですぅ」
「へぇ~」

「ここって野菜育つかな?」
「やったことないからわからないなの」
「畑作るですぅ?」
「十六夜様が許可してくれればだけど」

『構わんぞ』

後ろから声がし振り向く十六夜だった

「十六夜様、キスですか?」
『いや、キスは1日2回程度でいいだろう。それとも俺様とキスしたいのか?』

「い、いいえ!あっ畑の件ありがとうございます」


『近いうちに買いに行くか』

「はい」
「デートですぅ」
「デートなの〜」

「違うよ〜」
『でぇと?なんだそれは?また変な事覚えやがって…』


『榛名』
「は、はい!」
名前を呼ばれただけでドキドキした


『俺様は水遊びしてくるから何かあればムクとミクを頼れ』
「はい」

十六夜は龍神の姿になり海へ潜っていった


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