闇の龍神様と癒しの神子
「忌み子が神子?」
「神子って神に愛される特別な人よね」
「何かの間違いだよな」
「忌み子が龍神様を騙してるに違いない」…など
住人たちからのヒソヒソと話しが聞こえる


(十六夜様の声だけ耳を傾けろとは言われたけど、実際聞くとキツい…気を強く持たなきゃ…!)


勇気ある?住人が手をあげ十六夜に質問を投げかける

「り、龍神様、この娘は霊力が全くないのはご存知でしょうか?」

『当然知っている……榛名は…』と言葉を続けようとした時だ。


「その女は神子なはずありませんわ!」

十六夜の前に雪愛がやってきた

『お前は?名乗れ』
榛名の妹なのは知っているが名前は知らない

「私は神楽雪愛です。神代家に近い分家になります」

『小娘、榛名が神子なはずがないと言ったな。理由を言え』
雪愛の名前はあえて呼ばず、冷たい態度を取ったのだが、気づいていないどころか頬を赤く染め自信満々に言い放つ。

「この女は霊力がないからとグレて、島で悪さをする大罪人なんです。だから生贄になっただけですわ!ねぇ、皆さん?」

島の住人に語りかける。
島では神代家以外は番の相手の強さや権力が家柄より優先される。だから住人たちは神代家当主がいる手前、下手な事は言えないと困惑しつつも控えめに雪愛の言葉に乗ることにした。


『……』
十六夜はあえて何も言わず、雪愛の次の言葉を待った

「私は次女でありながら、この島で一番の霊力を持つ私こそが龍神様の神子に相応しいのです!初代様のように番にしていただいてもいいんですよ?」

自分が選ばれ相応しいと自信が溢れているからこそ、雪愛は十六夜相手でも上から目線で語る



翼と冬史郎は雪愛の発言に驚いている。


雪愛は榛名を睨みつけ鼻で笑う

「榛名お姉様、お姉様も自分より妹の私の方が相応しいって思ってるはずよね?早く龍神様からどいてくださる?龍神様の隣は私のよ、聞き分けなさい」


「…私は間違いなく十六夜様の神子です」

牢屋に閉じ込められてから初めて反抗した。
怖くて勇気がいるけど十六夜が榛名に勇気をくれた。
自信を持て、と。


< 51 / 110 >

この作品をシェア

pagetop