闇の龍神様と癒しの神子
六ノ章


東丿島に到着すると島の住人たちが榛名と十六夜が現れたことに驚きつつも、頭を下げていた。

神代家に向かう途中、榛名は島の雰囲気が妙に静かな気がした。

神代家に着くと島にはインターホンなどはないため榛名は「御免下さい!龍神様をお連れしました!!」
門の前で声を発したが返事はない。

「聞こえないのかな?…って十六夜様!!」
十六夜は門を勝手に開け中に入った

『開いてるぞ。俺様特権だから問題ない』
「うー…」
罪悪感を感じながら榛名は十六夜のあとを付いて行き、広い敷地内に足を踏み入れた。

十六夜…お客が来たというのに誰一人として出迎えてこない。

「なんだかおかしいですね…人がいないなんて」

『霊力の気配は感じるから人もアヤカシもいる、天狗の小僧もな。天狗の当主と妖狐の当主はいないようだが………!』


十六夜が突然榛名の手を握り、一緒に走り出した。
土足のまま室内に入りこむ。

「え…い、十六夜様!靴脱がないと…」
『必要ない』

早歩きでキョロキョロなにかを探し、ある部屋に辿りつくと勢いよく襖を蹴り飛ばした。


「十六夜様、いけませんって〜!」
慌てて止めようとした榛名の目に飛び込んできたのは……



「あ…葵!!…それにご当主様!!」

思わず口を押さえてしまった。


葵と神代家当主が倒れていたのだ。
葵は出血はないもののボロボロで、神代家当主に至っては重症だった。

『…榛名!』
「はい」
榛名は神代家当主の治癒をはじめた。
すぐに回復し一命を取り留めたが、意識はまだない。

十六夜は葵の体を起こす。

「葵の治療しなくちゃ…!」

『俺の使いだから休めば回復する。心配するな』
「でも…」
だとしても痛々しくて見ていられなかった。

『誰にやられた?神通力を与えたお前に怪我させるなど並大抵の者ではないはずだが…』

神通力を持つ者は人間やアヤカシの力は無効だ。
アヤカシ同士のように神や神通力を持つ者同士以外は。


「…榛名様…あとオマケの十六夜様……油断しましたわん……変な液体を飲まされたら…この有り様ですわ
ん………はぁ…はぁ……ご注意ください、…っ!」



十六夜は突然、斬られ大量の血が床に飛び散る

十六夜は獣のような鋭く攻撃した相手を睨みつけた。

十六夜を斬ったのは天狗のアヤカシ・翼。
十六夜の一瞬の隙をついたようだ。


「い…いやああああっ!!!十六夜様ぁぁ!!…きゃああ!!」

榛名は斬られた十六夜にショックを受け、叫んだが誰かに後ろから羽交い絞めにされ口と鼻に何かを湿らせた布で押さえつけられると気を失ってしまった
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