白球を天高くかざせ乙女たち!
プロローグ
「おねがい! 志良堂くん」
「あ……えーと、その」
どどどどどうしよう?
中学校からずっと憧れていた女の子が僕をじっと見つめている。
僕、志良堂太陽(しらどう てだ)の序列は「雑草」。
草食系男子にもなれないカースト最下層なため、女子と話すのは小学校の遠足以来だ。
そんな僕が、九家学院四天王のひとり、天花寺 月(てんげいじ つき)さんに話しかけられるなんて、もしこれが夢なら心臓に悪いから早く目を覚ましたい。
「志良堂くんって、八景シニアだったよね?」
「う、うん」
たしかに中学時代までは野球をしていた。
しかし、高校ではまだどの部活にも所属していない。
「どうしてもダメ? 野球部のコーチ」
「嫌なわけではないんです……」
同級生に敬語で返事してしまった!
でも、憧れの天花寺月さんに見られたのを思い出しながら、夕飯はご飯を3杯はおかわりできそうだ。