白球を天高くかざせ乙女たち!
「……さまぁ~~っ!」
橋の向こうから数人の女子生徒が駆け寄ってくる。同じ九家学院高校の制服だが顔に見覚えがないため、上級生なのかもしれない。
「水那さま、急にどうしたんですか?」
「すまない、ちょっと人助けをしていてな」
水那さま?
もしかして、僕のクラスの女子が噂していた九家学院高校四天王のひとり、2年の源 水那。たしか陸上部のエースで県代表にも選ばれると聞いた。イケメンぶりが凄くて、毎日、学校内外の女子から告白されまくっていると話していた。
「 まさか恐れ多くも水那さまに告白をしたのでは?」
「なんて図々しい! 身の程を知りなさい。この虫けら●●●ッチがっ!」
いやぁぁぁぁぁっ!?
何もしていないのに、ひどい言われよう。メンタルがどんどん削られて、これ以上は僕の生命活動に影響を及ぼしてしまうかも。
「ふふっ、違うよ、一緒に人助けをしたウチの高校の後輩だ」
「この子が例の1年男子……」
助かった。
水那さまに助け船を出してもらわなかったら、廃人になっていたかもしれない。
はて? なぜ僕まで「さま」をつけているんだろう……。
「それよりさ」
「はい?」
水那さまが、親衛隊の女子たちへ手を挙げ、すれ違いざまに一瞬、僕の耳元へ顔を近づけ囁いた。
「キミ、可愛いね」