白球を天高くかざせ乙女たち!
「やはりか、先ほど榊 雷闇君と話しているのを見てそうじゃないかと思ったよ」
「はぁ……」
白髪が混じっていて、歳の割には目が鋭い。まだまだ上を目指す野心家の目をしている。
「君が高校野球界で知られていない高校にいることは正直どうでもいい」
腕を組んでいる聖武高校の監督は、九家学院高校女子野球部の皆を退屈そうに眺めている。
「どうだね? 勝たせてやる代わりに君が聖武高校に転校するというのは?」
つまり、わざと負けてやると話している。監督であれば、練習試合で補欠ばかり選んでも誰も文句を言わないだろう。ましてや昨年の夏に聖武高校を甲子園に連れて行った名将ならなおさらだ。
「今日は聖武高校に胸を借りにきました」
「つまらん練習試合だと思っていたが、君がいてくれて、良かったよ」
「ですが、気が変わりました」
「なに?」
いやぁ、まさか僕みたいな雑草が、甲子園出場経験のある強豪校の監督に対して啖呵を切ることになるとは思わなかった。