白球を天高くかざせ乙女たち!
第8球 ルールと采配
変速的な投球フォームで、リリースポイントがすごく低い。身体の柔らかい女子だからできる投球かもしれない。男子が同じように投げると怪我しやすい投げ方にみえる。
地面ギリギリからリリースされる投球は、マウンドの高さを考慮してもストライクゾーンの低い位置で10センチ以上は浮き上がってくるように見える。特に三振ゾーンと呼ばれる内角高めのギリギリ外れたところに行くと、80センチ以上は高低差があるように感じる。まるでボールが浮き上がってくるような錯覚を引き起こし、三振を量産してしまう。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
──まずいかも。
6番の西主将はブツブツと何かを呟いていて、まわりが見えていない。自分がキャッチャーだった場合の配球が頭にこびりついて、ついバットを振ってしまう癖がある。
それに対しておかっぱ頭のキャッチャーは西主将を観察しながら配球を考えている。
キャッチャーには大きく分けて2種類のタイプがいる。データを元に組み立てるタイプと、相手の様子を見て配球を変えるタイプ。データを元に考えるタイプは、キャッチャーとしては問題ないけど、バッターとして打席に立つと、一度ハマってしまうとなかなか抜け出せなくなる選手がいる。
西主将が前傾姿勢を取る。もう外角低めを打つ気満々なのがバレバレ。案の定、相手は外角低めの縦に変化するボールを投げてきたので、危うくゴロになるところだったが、思ったより掠めてくれたお陰で後ろに逸れてファールになった。