白球を天高くかざせ乙女たち!
「よお、新四天王の天花寺ちゃん」
「あなたは?」
金髪の高身長の女子。
スカートの丈が長めで、立ち上がると僕よりすこし目線が上なので少なくとも175センチ以上はある。
「つれないね。アタイは四天王のひとり、2年の桜木茉地(さくらぎ まち)さ」
うーん、喋り方にレトロ感が……やっぱりヤンキーだからなのか?
あと、「アタイ」って、言っているのを生で初めて聞いたかも。
ちなみに四天王というのは、この学院で生徒に人気のある4人の女子のことを指す。
入学式で3年の生徒会長は見たので知っているが、他のふたりは知らなかった。
「野球部でないなら、桜木先輩はここでなにをしているんですか?」
「西ちゃんに相談して部室を共同使用してるだけさ、なぁ西ちゃん?」
「は……はい」
桜木茉地が、先ほど返事した黒縁眼鏡の女子の肩に腕を回すと、西さんと呼ばれた女子はうつむきながら返事をした。
「どうせ、脅しているんでしょう?」
「はぁ? どこに証拠があるのよ、天花寺ちゃん」
「私たちと勝負してください」
「人の話を聞かないねーこの子。痛い目に遭わせてやろうか……」
「怖いんですか?」
「ああん? もういっぺん言ってみろやコラ?」
めっちゃ怖い。
こんな修羅場に出くわしたのは初めて……。
このままだと僕、お漏らししちゃうかもしれない。
バチバチに視線を激突させるふたり。
「で? 喧嘩でもしようってかい?」
「いえ、違います」
天花寺さんは、桜木茉地から一度視線を切って部室の端へと歩いていき、ある物を握りしめ振り返った。
「もちろん、野球で勝負です!」