夏よ溶かして、

プロローグ

「す、好きですっ。付き合ってください……!」
 委員会が同じの後輩__白間渚(しらまなぎさ)から告白された。正直そんな気はしていたけど、まさか本当だったなんて。

 近頃、目が合う頻度が多くなった。他の女子とは明るく楽しそうに話しているみたいだけど、私といる時は常に緊張した様子で、それでも色々な話題を振ってくる。それも、耳の先まで真っ赤に染めて、つっかえつっかえに。
 三日前は、「今日一緒に帰れますか?」と誘ってきて、帰り際には連絡先を聞いてきた。断る理由もないからと交換すれば、彼は心底嬉しそうに私にお礼を言った。
 でも……、
「ごめんなさい」
 付き合えない。付き合えないんだ。
 勿論、私を想ってくれているなんて当たり前じゃないし、すごく特別な事だって分かってる。
 それに自分を好いてくれる人の気持ちにはなるべく答えたいものだ。けど、半端な気持ちで、本気の相手と向き合うなんて失礼だろう。
 頭を下げる私に、彼は少し黙ったまま作った拳を強く握る。
「……もっと頑張れば、届きますか」
「ごめん。少なくとも、今は駄目かな。……けどね、私今、すっごく嬉しいの。ありがとう、白間く__」
「今じゃなくてもいいです」
 私の言葉に被せるみたく、彼は声を張った。少し……というかかなり驚く。
「俺、諦めませんから」
 ……こんなに真面目な顔をした白間君は初めて見た。
「ありがとう」
 こんなにも伝えてくれる彼に、たったの五文字でしか返す事ができないなんて、自分が情けなくてしょうがなかった。
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