御曹司は溺愛彼女を捕えて離さない
翌朝目が覚める。
時計を見れば朝の五時。

大河はまだ私を抱きしめて隣で眠っている。

私は起こさないようにそーっとその腕から抜け出した。

脱ぎ散らかしたまま、まだすこし湿ってるドレスを拾い身につける。

まだ泣くな。

まだだ。

ここで気づかれたら、絶対にダメだ。

大河の中の記憶に私の泣き顔なんて残せない。

そして振り返りもせず私は部屋を飛び出した。

そして崩れ落ちるように廊下で泣きじゃくる。
声を押し殺して。

大河…

大河…

好きだよ。

どうか、どうか…
幸せになって。

どうしてもさよならは言えなかった。

そしてなんとか立ち上がり、ホテルを出てタクシーに乗り込み預けていたロッカーに荷物を取りに行って、私はニューヨークへ旅立った。
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